2009年07月20日

真夏の夜の夢。叶えたい夢と悪夢の近似性。

ギタリストは、クロスロードで悪魔に魂を売り、引き換えに才能を手に入れたかったらしい。

何で読んだのか記憶は定かじゃないけど、ある小説家志望の青年が、高名な小説家に訊いた。
「僕はどうしても小説家になりたいんです。教えてください、小説を書くために一番必要な才能は何でしょうか?」
小説家は答えた。
「何時間でも一人ぼっちで紙の前に座り続けていられること。そしてそれを毎日毎日、何年も何年も続けても、まだ書きたいと思えること。」

そこで、考えてみたよ。
その青年が、クロスロードで悪魔と魂の契約をしたとしたら。


望みどおり小説家になった青年は、寝ても覚めても小説のことが頭から離れない。
テレビを見ていても、友人と会っていても、酒を飲んでも、美しい景色を見ても、もう心の底から楽しめない。心安らぐ時は一瞬たりとも無くなってしまった。
その会話を、その表情を、その情景を、何もかもをどうやって小説の中に生かそうかと考えてしまうからだ。
疲れ果ててぐったりとベッドに倒れこんでも、夢を見た瞬間、それを書き留めるため飛び起きてしまう。
大好きだった本も読めなくなった。
誰か他の人間が書いた文章が、優れていれば焦り苛立ち、劣っていれば自分だったらこんなものは書かないと歯ぎしりし、また紙の前にすっ飛んでいってしまうから。

恋もした。
だけど、めくるめく想いや交わされる熱い言葉の数々、抱き合いたい衝動も、揺れ動く感情から彼女の仕草の一々まで、やっぱり全てをどう小説の世界で表現するか考えてしまっているから、いつもどこか上の空だ。
このままでは振られてしまう、と怯えながらも、振られたら振られたで、また新たに書けるものがある、と思ってしまう。

何年かが経ったが、悪魔の契約の力は絶大で、少し年を取った彼の毎日は少しも変わらない。
ただ、その年齢には似つかわしくないほど、めっきり老けてやつれ衰え、健康も損なわれつつある。
金はない。
悪魔は、魂と引き換えに才能は約束してくれたが、名声と富は約束してくれなかったから。
魂は一つ。引き換えにもらえるものも一つ。
彼が小説を書いていることなど、ほとんど誰も知らない。
世間の人々は、彼という小説家の存在すら知らない。
かつてやっとの思いで契約した出版社とは、とっくに縁が切れている。コネなどどこをどう手繰ってもない。
身内は、外に対して彼の存在や彼が日々していることを隠そうとする。
近所の人たちからは変人扱いされ、迷惑がられたり気味悪がられたりするので、関わることはない。
友人たちも離れていった。
だから、彼の書くものを読む者も待つ者もいない。
それでも彼は書き続ける。
書きたくて書きたくてたまらない。

かつての彼女は、彼の妻になっていた。
若く美しく輝くようだった彼女が、今目の前にいる女性と同一人物だとは信じられないくらいだ。
それについても書く。
妻が泣く。
生活が苦しい、と泣く。いつまでこんな暮らしを続けるつもりなのか、と責める。こんなはずじゃなかったと嘆き、ろくでなしとなじる。
それも直ちに書き留めなくては、と彼は思う。
幼い我が子が飢えている。
お腹が減ったと泣きじゃくり、周囲の子供たちからは彼の子供だというので理不尽にいじめられ、深く傷ついている。
そんな時この子はどんな気持ちなんだろう、と彼は考える。胸が張り裂けそうに痛む。
そしてこの辛さや苦しさをつまびらかに書き表せたら、どんなに生々しい文章になるだろう、と湧き立つような思いにかられる。

やがて、すっかり年を取った彼は、相変わらず書き続けている。
妻と子は出て行った。
すでに妻の頬に涙はなかった。
成長した我が子には、力いっぱい殴り飛ばされた。
惨めさに打ちひしがれ、身を引き裂かれるような喪失感に打ちのめされながら、とても良い小説が書ける気がしてきて、何だか少し嬉しくなった。
ろくに食べることもできず、眠ることもできず、外にもほとんど出かけないものだから、身体を壊して寝たきりになった。
体力があるはずもないから、治る見込みもない。
医者にかかることも薬を買うこともできないから、痛みにのたうちまわり、時々血を吐くが、なすすべもない。
だが、寝込んでいるのさえ惜しいから、ベッドの脇に机を寄せ、半身を起こして書き続ける。
悪魔から与えられた才能の下に、ひとりぼっちで書き続ける。

そして、とうとう彼の生命の尽きる時がやってきた。
あの時の悪魔が、彼の枕元に立つ。
彼は悪魔に言う。
望みどおり才能を手に入れ、文字どおり小説に人生を捧げ、小説家として生きて死んでいく私だが、一秒たりとも満たされることはなく、幸せを感じることもできなかった。だが、それもやっと終わりを迎えるのだ。やっと心安らかに眠れるのだ。
悪魔は答えた。
そうはいかない。お前は魂を売ったのだ。未来永劫、安らぐことなどできはしない。魂の無い者に幸せなど感じられるものか。
死について書きたくてたまらないのに、動かなくなった身体に焦れ、肉体が消滅していくさまを書きたくても、もはやペンを持つこともできないことにおののき、あの世においてはあの世の全てを書き表したいと身悶えし、いつか再生される時が来たら、また同じ生をくり返す。永久に無限に、そのくり返しだ。

彼の断末魔の悲鳴を聞きながら、悪魔は笑う。
私は悪魔だ。人間を、苦悩と絶望と恐怖の地獄に堕とし入れることこそが使命であり、悦びなのだ、と。
悪魔の高嘲いを聞きながら、彼は思う。
悪魔との契約についてのあれこれを、何とか小説に書けないものだろうか、と。


さて、ここまで読んで、それでもクロスロードに行こう、と思う人がいたら、あなたはすでに悪魔に魅入られていますので、気をつけて。
悪魔の囁きは、いつだって言葉巧みで甘く魅力的なものです。
もちろん、何をするのもあなたの自由なので、止めはしませんが。

この青年こそ自分だ、と思える人がいたら、あなたは正真正銘、芸術に魂を奪われたアーティストなのではないでしょうか。
当然、クロスロードに行く必要はありません。
きっと、遠い遠い昔、今の生を受けるよりずっとはるか以前に、悪魔と出逢っているはずですから。
posted by see-co at 19:24| 日記 | 更新情報をチェックする

2009年07月18日

ミョウガ見ようが。

雨の日の畳の部屋の匂いが好きです。


我が家に『アルカリイオン整水器』なるものがやってきました。
家人の3年越しの悲願(←大げさでもなく)が叶いました。
裏ルートを通じて手に入れたため(!)、今のところ約○万円のお代は払っていませんが、将来きびしく取り立てられるやも知れません。きゃー。

さて、これ↑により、我が家のキッチンの水道からは、水道水/浄水した水/アルカリイオン水/弱酸性水が選んで出せるようになったわけです。

弱酸性水は、洗顔などに使うとGOOD!ならしいが、キッチンで洗顔はどーもね。。。
なので、お皿洗いなどは水道水、料理や飲用にアルカリイオン水、というふうに使い始めました。

でねでね、アルカリイオン水、おいしー!!
家人が強く所望し続けていた理由が判ったし。
インスタントコーヒー、まろやかで後味スッキリになったのが、たった一口でハッキリ判ったし。
お米もふっくら炊けるし。
ビックリだし!
なんか楽しいし!
おまけに胃腸にも良いらしいし。
し、とか似たような言葉並べてみたけど、しつこいし。
こーやってふざけると、伝わりづらいし。すみません。。。


ところで、悩みって、聞いてもらえるだけでも楽になるもんだけど。
受け止めてもらえたときには、ありがたくて、しっかりしなきゃな自分、とか思えるもんだけど。
わかってもらえたときには、半分消えちゃうね。
それはそれは不思議なくらい、すぅ~っと。
魔法みたいに。アブラカタブラ。
posted by see-co at 17:52| 日記 | 更新情報をチェックする